人というものがこの世に生まれて
それらと同じ瞬間に、同じ数だけ生まれる存在があった

A fairy of the happiness

人々を紡ぐ、小さな妖精の物語




私の家は昔から母子家庭だった。
私が生まれて少し経ってから、両親は上手くいかずに離婚してしまったと聞いている。
母の方に引き取られて、それからは二人で暮らした。
父親の方から養育費というものは振り込まれているらしかったけれど、それだけでは生活出来ない。
その日も母は私を育てるために仕事へと行ってしまった。
もう毎日の事で慣れてしまった事ではあるが、少し寂しくも思う。
私は活発な方では無かったけれど、それでも多くの友達がいた。
今日はたまたま誰も捕まらなかったので、一人で公園にきてみた。 ・・・のだけれど。
一人で遊ぶのは、やっぱり面白く無い。
ブランコを漕いだり、シーソーの真ん中に一人で立ってみたり。男の子の真似をして、ジャングルジムにも登った。
けれどそれにも飽きてしまって、芝生の上でぼんやりと空を見上げていた。
ゆっくりと流れる雲を見て、私も何処かに流れて行ってしまいたいと、そんな事を思い始める。
ざざざ・・・
風が草木を揺らしながら疾走し、ついでにと私の髪も撫で上げる。秋の風は、少し冷たかった。
・・・・・・♪・・・
風が運んできたのか、何処からか声が聞こえてきた気がする。いや、声というより歌に近いかもしれない。
耳を澄ませてみると、綺麗な女の子の歌が確かに聴こえてくる。
近くで聴こえているような気がして辺りを見回してみても、誰もいなかった。
自分の耳がおかしくなったのかと、本気で考えてみる。それでもまだ、綺麗な歌声は続いていた。
歌詞を聴いても、理解は出来ない。恐らく、だけれど英語という未知の言葉なんだろうと思った。
やがてついに 彼女を見つけた。
眼を閉じて身体を僅かに揺らしながら・・・・・・風に乗せて詩を運んでいく。
その姿におかしい所はない、のだが。 問題は、彼女が凄く小さくてベンチの上に立っていることだろう。
私だって、それほど背が大きい方じゃない。クラスでも前の方になってしまう。
でもだからと言って、今目の前にいる30cmにも満たない彼女ほど小さいわけでもなかった。
「――ん、ぅう」
一曲丸々歌い終わると、彼女は喉を鳴らして姿勢を正す。また歌い始めるのだろうか。
その時にようやく、眼が合った。最初に驚き、次に笑顔に変わっていく。
思わず私は・・・・・・、両手でバシンと彼女を捕まえた
「痛い! つ、つぶれ、る・・・ぅ」
「あ、えっと・・・・・・ごめんなさい?」
珍しい生き物を捕獲した気分になってしまったんだろうか。
それに、まさか言葉が通じるとは思わなかった。英語とかいうものではない。
「もー! 折角出合えたのに、いきなりそういう事するの?」
彼女は怒った顔でパタパタと音をさせながら私の両手から抜け出すと、私の肩の上に乗った。
・・・パタパタ?
見れば、背中に一対の羽根が付いているのがわかった。彼女の大きさからして、少し大きすぎる気もする。
「妖精・・・さん?」
「そうそう。最近の子は物分かりがよくて良いわね。
 私はアル。貴方達人間を紡ぐ、ありがた〜〜い妖精よ」

それが羽根の生えた小さい友人との、初めての出会いだった。


アルと出会ってから、私は一人で公園に行く事が多くなった様に思う。
彼女の話は私が知らない事ばかりで、聞いていて面白い。
アルは私以外の人間は見えないらしい。また逆を言うと、私には妖精はアルしか見えなかった。
同様に、アルは私にしか見えないし 私を見えるのもアルだけだと言う。
彼女の話によると、妖精は人間と必ず同じ数だけ存在しているらしい。
私たちが出会ったあの公園にも、何十人(?)もの妖精がいたと聞いて驚いた。
どうして私がアルだけを見付けて、他の妖精を見られないかを訪ねてみる。
「それは私とヒナが運命の相手だからよ」
アルは私の肩の上に乗って頬を撫でてくる。ヒナ、というのは私の名前だ。
「運命の相手??」
その言葉だけを聞くと、将来結婚して一緒になる男の子の事を考えてしまう。その相手は、わからないけれど。
「私たち妖精と人間は、お互いが認識出来る存在が必ず一組ずついるの。
 それは必然の出会いで、人生の中で誰しもが体験する事なのよ」
アルの言葉は、私には少し難しい。よく大人の人が演説しているみたいな、そう言った物に聞こえた。
「・・・つまり、私たちはこれからずっと一緒なの」
幸せの妖精。 アルは自分達の事をそう呼んでいた。
人と人とが惹かれ合うという事はつまり、お互いの妖精同士が仲良くなる証なのだと言う。
多少なりとも感情を私たち伝える事が出来るらしく、恋人などを作る上では自分達は大切な存在らしかった。
大人たちは何故妖精の存在を知らないのか
そうやって訪ねた時に、アルは少し寂しそうな顔になった。
「・・・人はね、幸せになると私たちの存在を忘れてしまうの。
 ヒナだってこうやって話した事も、いつかは記憶から無くなるのよ」
「アルは・・・・・・どうなるの?」
「私は変わらない。ヒナが私を忘れても、私はずっとヒナの側で歌ってるよ」
それは凄く、寂しい事なんじゃないんだろうか。
「大丈夫、私はヒナの事を覚えているもの。それだけで充分なの。
 それに妖精同士で話す事は出来るし、一人じゃないよ」
アルがそう言って微笑むと、不思議と安心した。これも彼女が言う感情の伝達なのだろうか。
きっとアルが言う通り、私たちはずっと一緒なんだろう。
例え忘れてしまっても、そこに彼女との絆は確かにあったはずだ。だったら、悲しくは無いのかもしれない。
だから、今はこの瞬間を大切にしなければならないと思う。
いずれ別れがくる、その日まで。





大人になっていく過程の中で、私はいつしか彼女の存在を忘れてしまった。
悲しいと思うこともなく、働ける歳になれば働き、忙しい日々を送ることになる。
だけど私は、幸せだった。
例え父親がいなくても、早い時期から働かなければならなくても。私は幸せだった。
彼女の存在を思い出せないのだから、間違いない。
もし思い出すような事があったなら・・・・・・。 ・・・いや、思い出せない方が良いんだろう。
『不幸』になれば、また彼女に会えるかもしれないけれど。アルはきっとそんなことは望んでいないだろう。

だから私は、二度と彼女を思い出す事は無かった。
誰よりも側にいてくれた存在に、気付く事は出来なかった。
それでも、
それでも、彼女はずっと・・・・・・。




〜〜♪
小さな小さな英語の詩が、空に向かって響いている
妖精は眼を閉じて身体を揺らし、飽きもせずに毎日同じ言葉を繰り返す
それは、運命の相手の幸せを願う詩

昔も今も、そしてこれからも変わらずに
彼女の側で、妖精はずっと幸せを歌い続けていく













-あとがき- どうも、Yukiです。 前回に長いのを書くとか言っておきながらまた短編でした。申し訳ない・・・ 正直言うと、スランプに入ってました 書く文書く文、上手くいかない・・・・・・。上手く表現出来ない・・・・・・。 そんな事が続いておりました。 私はいつも文章を書く時に、自分が書きたい物を書いているつもりです。 良くも悪くも、それが自分「らしい」小説だと思っているので で、今回書いてる時に思ったのは、自分「らしさ」っていうのは何だろう。 そもそも、どうして小説を書こうと思ったんだろう。 こういう文章を見て、周りの人はどう反応するんだろう。 等々、考え込んでしまって どういう表現や言い回しにするのか、まったくわからなくなってしまいました。 今回のこの「幸せの妖精」は、自分が書きたいと思った事を詰め込んだ、自己満足の作品です。 ちょっと伝わらない事もあると思いますが・・・・・・。 これが自分「らしい」文章なんです、お許しを。 さて、「幸せの妖精」ですが もしかしたら妖精シリーズとなる・・・・・・可能性はあるかもしれないです。 個人的にまた詰まってしまったら、初心に帰ってこういうのを書くのも良いかも・・・? ただ今の所まったく話を考えてないので、出るとしてもかなり先の方になるかもです。期待はしない下され・・・ それでは、いつも読んでいる皆様方、ありがとうございます 絵師のつちのやしろ氏、忙しい中いつもありがとう(`・ω・´) これからもどうかお付き合い下さいませ ではでは、